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みみはな・ちびコラム

スクーバダイビングで耳ぬきが出来ない方へ

ダイバーの皆様には基本過ぎて申し訳ありませんが、今一度【耳ぬき】が何なのか述べさせて頂きます。
それは、潜行を始めると水圧で鼓膜が凹み、耳痛・耳閉塞症状が現れるため、その鼓膜の
凹みを直すのが耳ぬきです。
実際は、鼻から中耳へ息を入れるので[耳に空気入れ]なのですが、耳痛・耳閉感を取る
(=抜く)動作であるため[耳ぬき]と言われています。

ダイビングでの耳ぬきを楽にするための7方法を、箇条書きにしてみました。

  1. ダイビングの4〜5日前から、鼻呼吸を楽にするための抗アレルギー剤の服用を始めて
    下さい。アレルギー性鼻炎が無い人にも効きます。同時に1日2〜3回の耳ぬきの練習も
    無理なさらずに始めて下さい。
  2. 耳ぬきは鼻をつまんだまま、鼻から息を出そうとしますが、その際ゴクンと嚥下
    (えんげ=飲み込む動作)もなさって下さい。
  3. 当日の朝にも必ず、ホテルやご自宅で耳ぬきが出来るか確認して下さい。出来にくい
    場合は大変残念ですが、その日のダイビングは中止なさって下さい。
  4. ダイビング中に嚥下動作が継続できるよう、喉を潤す事が重要です。潜行直前まで
    メンソール入りのど飴等をなめ、飲み物を少し飲んでから潜り始めて下さい。飴は
    必ず、口から出して潜行して下さい。
  5. 潜行は、船から下がっているロープを伝って、2.のような「嚥下を伴う耳ぬき」を
    しながらゆっくりと潜って下さい。
  6. 耳ぬきは、抜けにくい方の耳を少し上に向けるようにして行うと、より抜けやすく
    なります。それは単純に、空気は水中で上に向かうからです。しかしこの際、海水が
    耳の奥に入り込むのが不快な方はお止め下さい。
  7. 耳ぬきが出来ないまま潜行を続けると、ますます抜けにくくなります。その際は少し
    上昇してから、耳ぬきをやり直して下さい。

では上記1~7に補足させて頂きます。

  1. 当クリニックをご受診なさる、耳ぬきが苦手な方のほとんどが、事前に耳ぬき出来るか試さず、又練習をなさらないようです。地上で耳ぬきが出来ない場合、水中ではもっと難しくなりますので、ダイビング前に必ず、耳ぬきが出来るか試して下さい。

    又、ダイビングの教則では「耳ぬきのための薬剤は一切服用しないで下さい」と教えています。それは『ダイビング中に薬の効果が切れて、耳ぬきが出来なくなる事があり、又、薬の副作用としての眠気が危険』だからと理由付けています。

    しかし内服薬は4~5日前から服用開始すれば、水中で急に薬の効果が切れる事は絶対にありません。又、最近は眠気が殆ど出ない抗アレルギー剤もあります。
    多少眠気が出る薬でも、ダイビング中に寝てしまった…という話は聞いた事が
    ありません!

    使用してはいけない薬は、市販されている鼻スプレーの殆どに入っているナファゾリンという血管収縮剤が入っているものです。
    この成分は一時的に鼻粘膜の腫れや浮腫みを取り、鼻の通りが著明に良くなりますが、使用してから短時間で効果が切れ、水中で鼻づまりがひどくなるので、これが耳ぬきの障害になることは事実です。

    また欧米では麻薬的ドラッグも多々ありますので、教則本で「この薬はOK、こちらはNG」とは教えられず、「全てのドラッグを使用しないで下さい」としか、責任上
    言いようが無いのだと思います。

    ひとつ大きな矛盾を指摘できます。ダイバーが船酔いした場合、インストラクター
    さんは酔い止めの薬ならば、ためらい無く服用させてくれます。
    しかし、この酔い止めの主成分は「ダイビング前に飲んではいけない」と言う
    抗ヒスタミン薬と同じ成分なのです。

    つまりは、耳ぬきの為に服用しないように、と教えている薬を、船酔いの際には
    躊躇なく飲ませてくれるのです…
    そしてこれは内緒ですが、当クリニックには、耳ぬきのための薬の処方を受けに来る
    ダイブインストラクターさまが3人いらっしゃいます…

  2. 耳ぬきと同時にゴクンと嚥下(えんげ=飲み込む動作)も行うのは、初めは難しいかもしれませんが、何回か練習すれば、必ずお出来になると思います。
  3. ダイビング当日にショップの方々に「今日は耳ぬきが出来ないのでキャンセルさせて
    下さい」と伝えても、ショップとしては(すみません…)潜らせてナンボですから、
    中には「大丈夫、ゆっくり私と潜りましょう」と言ってくる事もあります。しかし、1.で前述しましたが、地上で耳ぬきが出来ない場合、水中ではもっと難しくなりますので、断固キャンセルして下さい。
    無理に耳ぬきをしたり、逆に耳ぬきが出来ないまま潜行すると、鼓膜に穴が開くことがあります。鼓膜の穴から海水が中耳に入り込むと、強いめまいを起こしパニックに
    陥りますので、耳ぬきが出来ない状態では絶対に潜行なさらないで下さい。
    蛇足ですが、ダイビング前夜には飲み過ぎないで下さい。飲み過ぎは確実に耳ぬきの
    妨げになります。
  4. 飴をなめながら潜行しますと、何かの際に気管に誤嚥する危険がありますので、必ず
    口から出してからダイビングなさって下さい。
  5. 飛行機の降下の際は嚥下だけで耳ぬき出来るのに、ダイビングでは耳ぬきが難しいと
    いう方がいらっしゃいます。それはダイビングの潜行は、飛行機より急に耳に圧が
    かかる(急に鼓膜が凹む)からです。ゆっくり潜行すれば耳ぬきがしやすくなります
    から、バディの方々が先に深く潜行してしまっても気にしてはダメです。ゆっくり
    ご自分のペースを守って潜行なさって下さい。
  6. 7.は前述の通りです。

最後に、耳ぬきが出来ない原因について記させて頂きます。
それは、耳と鼻を結ぶ「耳管(じかん)」の換気が悪い(細い)ためです。耳管とは、鼻腔の最も奥から中耳(鼓膜の内側)に通じる細い管です。耳管の換気が悪い方の病名を耳管狭窄症といいます。

幼少時に頻回に中耳炎を起こした方、アレルギー性鼻炎・花粉症・副鼻腔炎(ちくのう症)がある方、又はダイビング当日近くに鼻・喉の風邪をひくと耳管の換気が悪くなり、耳管狭窄症となり耳ぬきがしづらくなります。

ほとんどの場合、治療を受ければ耳ぬきは出来るようになります。ただ副鼻腔炎がある
場合は、治療に数ヶ月、または手術が必要な事があります。

〈補足です;サイナス痛〉
ダイビング中に頭痛、眉間・頬部痛が出るのは、耳ぬきが出来ない原因と同じく、
アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎(ちくのう症)などで副鼻腔の換気が悪いためです。この説明に関しては、同じみみはなちびコラムの「アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎(ちくのう症)について」もお読み下さい。
副鼻腔のことをダイビングの講習では「サイナス」と教えていますが、このサイナスと鼻腔の換気孔がつまっていると、ダイビング中に副鼻腔内の空気が水圧で収縮したり、膨らんだり
する気圧調節ができず、頭痛、眉間・頬部痛(サイナス痛)が生じます。 これらの症状
改善のためには、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎の治療が必要です。

以上、耳ぬきやサイナス痛の改善には、耳鼻咽喉科での治療が必要です。
しかし耳鼻科医師のほとんどは、「耳ぬき」が何かは解りますが、ダイビング用語は理解
出来ません。
例えば「リバースブロックに悩んでいる」や「サイナス痛を治したい」等とはおっしゃらず、一般的な症状をお伝えして治療を受けて下さい。


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